高連協提言「心豊かに暮らせる社会を」(2009年)

2009年8月11日

高齢社会NGO連携協議会(高連協)
共同代表 樋口恵子
共同代表 堀田 力

高齢社会NGO連携協議会(高連協)は、高齢社会への対応とくに高齢者自身の社会参加活動を推進する団体(現在60余)の連携組織体です。
我々「高連協」は、2001年、国が示した「骨太の改革」において、改革の必要性には共鳴するものの、「第3章社会保障制度の改革」には、目指す社会像も無く、福祉・医療に対する基本的理念をも欠いた、市場原理経済優先の改革内容には驚かされました。我々は、反論として、今後の我が国の社会構造を基に、「総ての世代が安心して暮らせる社会の実現」を目指し、社会保障制度の在り方を訴えた提言を総理大臣に提出しました。しかしながら、政策方針は改まること無く、今や福祉・医療分野の随所に綻びが目立ち、特に2008年秋の金融主導経済の破綻以降、我々は我が国の社会福祉の貧しさを痛感しています。
このような状況を克服するため、我々は、改めて我が国の社会構造変化を見据えて、日本社会が今後目指すべきは「経済大国」ではなく、総ての世代の人々が「心豊かに暮らせる社会立国」であると主張するものです。

高連協提言「心豊かに暮らせる社会を」

はじめに
「高連協」(高齢社会NGO連携協議会)は、我が国の社会構造を見据え、全国のシニア活動家による「高連協オピニオン調査」を基に、「総ての世代の人々が心豊かに暮らせる社会」を実現させるため、高齢者も積極的に社会的役割を果たすことを望んで、次のとおり提言する。

1.基本的社会認識
1)我が国の社会構造(人口構造)について
(ⅰ)日本人口は、既に減少に転じている。今後、少子化対策によって出生率が上昇しても人口構造の高齢化は今世紀中頃まで進行する。
(ⅱ)日本人の平均寿命は、1970年代以降は世界最高水準で推移し、現在では、男性79歳、女性86歳。90歳の生存率も男性20%、女性では45%になんなんとしており、日本社会は、誰もが長生きを享受し得る普遍的長寿社会になっている。
(ⅲ)国連そして世界の有識者が、人口高齢化を人類社会の発展として前向きにとらえているのは、人類恒久の願いであった「寿命の伸長」そして「出産の選択」の具現化に因るからであるが、高齢化社会変化への対応には警鐘を鳴し続けている。
(ⅳ)欧米の高齢化先進国は、長寿社会の具現化と同時に、国勢の保持や社会諸制度の世代間平等、そして持続可能な社会づくりのためにも、死亡と出生が同等規模の「安定人口構造(社会)」を目指し、低下しすぎる出生率の上昇を図っている。我が国も欧米の高齢化先進国同様の少子化対策と国際人口移動・交流策を採るならば、今世紀後半には長寿社会の安定人口構造社会を実現することは可能である。

2)「高齢者(シニア)」について
介護認定、患者調査などに見るように、平均寿命を過ぎると医療、介護の対象となる者も増えるが、60代70代の者の8割強はほぼ健康である。
今日、長寿を享受する我々シニア世代は、先達の長きにわたる努力に思いを致し、到来した長寿社会をより良い社会にして、未来に引き継ぐ責務を担っている。長寿社会は前例のない未知の社会であるが、そこではシニアが社会経済の需給両サイドの大きな存在となるため、必要な社会システム、物やサービスも自らが考案し創り提供する役割もある。したがって、我が国でも、就労等における年齢差別を禁止する原則法が不可欠である。

我が国の経済は、平和社会の下で、本来内需拡大を促しつつ成長してきた。今後世界的に高齢化が進展し、高齢社会対応の新たな需要と産業が創出されることなどを考察すれば、高齢化最先進国である我が国は次のような高齢者事情からも好条件にあると言える。(1)高齢者の大半は、健康で自立でき、就労等社会的活動を健康、生きがいのためにも重要と考えている。(2)高齢者は、物づくりや商品開発に技術や経験を持ち、退職後も経験活用の意欲を持ち続けている。(3)高齢者は、我が国の成長過程において、大量生産・大量消費・大量廃棄や環境汚染を経験し、退職後に省エネ、3R活動などに取組む者が年々増加している。(4)高齢者は、物を大切にする「もったいない」意識を持つとともに、健康づくりや文化活動など生活の質を向上させることへの関心、行動率は極めて高い。(5)現在の高齢者は、我が国の貯蓄、資産の6割以上を保有しており、自らのためにも我が国の産業・企業への投資を行うグループも生まれている。(6)貯蓄する高齢者も、北欧社会のように、終末期の安心が図れるなら、無用な蓄えはしないと大半の者が答えている。<高連協オピニオン調査>

2.目指すべき社会
「高齢者をはじめ総ての世代の人々が生きがいを持ち、心豊かに暮らせる社会」
の実現である。

3.社会保障制度とその在り方
進展する人類社会において、社会保障制度は、人々が支え合い安心して暮らせる社会を目指して、創り上げてきた制度であり、ここに提言する「目指すべき社会の実現」の基盤となる制度である。

1)社会保障制度の基本的理念
(ⅰ) 総ての人が尊厳を持ち、自立に励みつつ、助け合って生きる社会にするため、制度は、自助を基本としつつ、共助の仕組みで自立を援け、その及ばざるところを公助によるものとする。
(ⅱ) 制度は、総ての人の権利と義務、享受と負担を基にしたものである。したがって、制度は、公平かつ透明で、分かりやすく、国民が参加しやすいものとする。

2)公的年金保険制度について
(ⅰ) 公的年金保険制度の必要性・重要性を理解する上でも、総ての国民が、自助、共助、公助、そして負担と給付の関係を、等しく共に考えることが出来るように厚生、共済など各種の年金保険制度の一元化を促進する。
(ⅱ) 現行の制度方式を維持するならば、団塊の世代など人口構造上から、今後の公助の負担増は避けられない。その対応、財源としては、北欧型内容の目的消費税も必要であるが、先ず高齢者が社会に残す相続税を同世代のための公費として充てるべきである。
(ⅲ) 制度の改正改革を図る際は、1両年の間は、改正内容の周知と世論調査を行い、その後に施行すべきである。

3)医療・介護保険制度について
(ⅰ) 医療・介護保険制度は、総ての人々が助け合う社会保障制度であるが、同時に医療・介護関連事業は、長寿社会対応が全世界の課題となる中で、我が国は世界の長寿最先進国であり、先進的技術・ノウハウを研鑚保持できる有利な立場にある。今後我が国の発展のため、医療・介護に関わる人材の育成、技術や能力の向上には国益としてあらゆる努力を傾注すべきである。
(ⅱ) 我が国の医療・介護に関する制度と運用は国際的評価も高いが、その運用内容については、より分かり易く定期的に状況報告を行うべきである。また、人口構造上から必要となる制度内容の改正に際しては、事前説明と世論調査を行った後に施行すべきである。「後期高齢者」医療制度は、その年齢区分も男性平均寿命75歳時代のものであり、国際的にも改めるべきである。(国連、世界各国のオールド・オールドは80歳以上。)
(ⅲ) 国民の健康管理については、個々人の自主性にも鑑みて、母子保健、学校保健などの各制度によって分断されないよう、生涯を通した健康管理(保健)として一体化し、乳幼児期からの既往症(暦)、免疫・抗体などを記載した「国民保健手帳(カード)」(仮)を各人が持てるようにすべきである。

(付) 長寿社会の指標「平均余命(寿命)」の公表時には、「前年の平均終末期間」も併せて公表し、高齢者の「老後の安心づくり」に寄与すべきである。

4.社会保障制度と併せて促進すべき主な施策
社会保障制度がより健全にセーフティネットの機能を果たすためには、今後我が国の社会構造変化、特に自立願望の高齢者、単身者、高齢世帯等の急増を見据えて、次のような施策を促進する必要がある。

1)自立、自己実現のための就労環境づくりの促進
(ⅰ) 性、年齢に関わらず働く意欲と能力に応じて就労できる社会システム(社会環境)の構築を目指し、働く人々の人権を守り、育児や介護の社会的必要性に則る柔軟な勤務条件、定年の延長や再就業等の施策はさらに促進する。
(ⅱ) 退職者や子育て離職者などによる起業の活性化を図るとともに、その起業、事業への支援や協働が容易に行える社会環境(規定)づくりを促進する。
(ⅲ) 社会貢献活動が実行しやすい社会にするため、NPO、NGO等ボランタリー活動に対する税制(寄付行為)上の措置を英米諸国並みに向上させるべきである。特に、ボランタリー活動に専念するスタッフやボランティア活動者への報酬や謝金(スタイペンド)の支給を行政も企業も不断に行える社会環境(法・制度、習慣)にすべきである。

2)地域社会の生活環境づくりの促進
(ⅰ) 地域社会は、人々が生まれ育ち、家庭を持ち、助け合って生涯を過す、生活の基盤となる所であり、我々の課題である子育て、教育、高齢者ケア等の総てが地域社会環境に関わる。したがって、地域住民は、地域社会の施策に関わる議員や首長の選出には積極的に取り組み、必要な施策を協働で促進すべきである。
(ⅱ) 健康管理、子育て支援、地域包括支援、そして緊急サービス等のセンター施設は、地域社会のセーフティネットワーク・ユニットとして整備し、センター関係者は、それぞれの事業活動のための組織づくりや運営には地域住民とくにシニアグループと図り協働で促進すべきである。

3)住環境整備の促進
(ⅰ) 若い世代と高齢者の住宅ニーズに鑑み、それぞれが必要とする規模の住宅で暮らせるよう、持家主義施策を推進してきた官民の関係機関と企業は相協力して、広域で住み替えが行えるマーケットづくりを促進すべきである。
(ⅱ) 安全安心して日常生活行動が出来るよう、身近な歩道の整備や交通ルールづくりを住民と行政は協働して促進する必要がある。
(ⅲ) 憩いや交流の場所、緊急避難の場所等多目的な空間・場所となる公園、広場、グランド、施設、居場所等は地域社会の資産として整備する必要がある。その運営・管理には地域在住シニアを活用すべきである。
(ⅳ)土地・家屋等資産は所有するものの、年金等収入に乏しい高齢者が、自立した生活を維持するために、持てる資産を担保に生活費の提供を受けるリバースモーゲッジ制度は、高齢者の自主的権限(サービス購入権者)を公的に保証するなど、官・民(企業)相協働して、普及促進すべきである。

4)長寿社会に対応した産業・企業の活性化
(ⅰ) 医療・福祉の発展はもとより健康、生きがいづくりの進展が想定される中で、それに関わる産業・企業活動が健全に発展できる社会環境(制度、施策等)づくりを促進すべきである。
(ⅱ)長寿社会のパイオニア世代となるシニアが考案する製品・商品づくりを活性化するための社会環境づくり(施策)を促進する。
(ⅲ) 高齢者(シニア)の社会参加活動が多様に展開される時代において、年老いても経済社会に参加する手段として、企業への資本投資がある。そのための企業のCSR研究そしてSRI活動が盛んになり、企業、産業の発展に寄与するよう、官民相協力して企業活動に関わる情報開示に努める必要がある。

この提言が、総ての世代の人々とくに我が国のオピニオン・リーダー各位の理解を得、実現することを願っている。

以上

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