2015年ノーベル経済学賞について

2015年ノーベル賞では、生理・医学と物理学の分野からそれぞれ日本人専門家が受賞され、日本中を明るくしている。ノーベル経済学賞は米国プリンストン大学のアンガス・ディートン教授が家計調査等を基にした「消費、貧困、福祉に関する分析」研究で受賞され、日本の家計研究者にも刺激を与えている。ディートン教授の研究は、消費税率の引き上げなどが家計や消費支出に与える影響について様々な調査データから研究分析し、政策立案に役立つ理論を構築したことが受賞に結びついたと言われている。
日本の「家計調査」は、敗戦後の昭和21(1946)年の「消費価格調査」から発展、「消費実態調査」や「貯蓄動向調査」などとの統合を経て、21世紀現在では、単身世帯(3か月間継続調査)、2人以上世帯(6か月間)を含む約9,000世帯を対象にして、「家計調査」は実施されており、調査対象世帯は順次、新たに選定された世帯と交替する仕組みで行われている。調査結果は、「家計調査報告」(月報)、年平均結果の「家計調査年報」に「家計収支編」と「貯蓄・負債編」として公表され、広く活用されており、関係専門家も多い。
また、「国民生活基礎調査」では、「所得票」と「貯蓄票」とによる資料データ、「全国消費実態調査」(5年毎調査)などはディートン教授の研究に関連する調査である。
さらに、日本では政策立案に資する調査も世論調査として行われており、これに海外の専門家が関心を持ち始めている。中でも「国民生活に関する世論調査」は昭和38(1963)年以降毎年20歳以上男女2~1万人対象(内閣広報室)は、日常生活に関する満足度、悩みや不安について尋ねている。これなどは国民の生活事情を知る最適な調査資料であり、日本の国として誇るべき調査と言えるが、為政者はその動向を殆ど認識していないように思えるが、僻目であろうか。
日本は、人口高齢化と人口減少が進み、既に全く未知の社会に突入しているが、我々はその認識が薄く、漫然と過ごしていると言える。しかし、我々シニアの生活状況は既に変わりつつある。2014年(12月調査)の「60歳以上高齢者の日常生活に関する調査」(内閣府)では、「日常生活全般についての満足度」が、5年前の調査と比べて大きく変わっている。「満足している」が26.4%から12.0%と激減、「不満」が4.7%から8.2%に増加している。「まあ満足」(なんとかやっている)は、58.5%、57.9%、55.5%、そして、今回は56.2%と20年間ほぼ安定した割合であるが。大くくりに、「満足」と「不満」とで見ると、5年間に、「満足」81.9%が68.3%、「不満」が18.0%から28.9%と、大きく変化しており。「家計調査」からもこうしたシニアの生活状況はうかがえよう。
日本の60歳以上人口といえば、現在日本の成人人口の約半数に当たる。この人々の生活状況変化は、日本人の生活状況が変わりつつあることを示しており、こうした状況を踏まえた政策立案が求められる。社会保障制度を拡大して、と言うが、自立に努める国民の自立に役立つ政策立案こそディートン教授は求めているのではないだろうか。 (S.Y)

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