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高齢社会NGO連携協議会(高連協)シンポジウム

平成22年5月17日午後4時~5時にプレスセンター9階の日本記者クラブ宴会場において「少子高齢社会におけるシニアの役割」というテーマで次ぎの演者のかたがたによるシンポジウムが催されました。

討論者  福島瑞穂(内閣府特命担当大臣〔消費者及び食品安全・少子化対策・男女共同参画担当〕)
       小宮山宏(東京大学総長顧問)
       堀田力(高連協共同代表)
司会者  樋口恵子(高連協共同代表)

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左から小宮山宏東京大学総長顧問、福島瑞穂内閣府特命担当大臣、
堀田力高連協共同代表、樋口恵子高連協共同代表

高連協シンポジウム『少子高齢社会におけるシニアの役割』

司会・樋口)本日は、この人生五十年社会から百年社会への変革期、そして少子高齢社会と言われる前代未聞の急激な変革期に私たちがなすべき課題に絞って論客を揃え、この小さな空間でその討論を集った皆さまと一緒に享受できる機会を持ちまして非常に嬉しく思っています。最初に討論者それぞれからお話をいただき、その後討論を重ねたいと思います。まず福島内閣府特命担当大臣、お願いします。 

<高齢者の定義>
福島)私はこの人生百年時代に65歳以上を高齢者と定義しているのはちょっと年齢が低過ぎるので、定義となる年齢をもうちょっと上げるか、あるいはもっと素敵な名前で定義してもいいのではないかと思っています。

<高齢者の居場所と出番>
3点ほどお話しします。1点目は、高齢者の居場所と出番の話です。『平成22年度高齢社会白書』では、高齢者のなかでグループ活動に参加している人が約6割、今後の参加したい人は約7割と、高齢者にとって居場所と出番が重要な機能を果していることを述べています。また、白書では高齢者の雇用促進面で90歳までの元気なかたを募集していて、実際働いている人の最高齢が89歳の企業を紹介しています。

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<支え合い>
2点目は「支え合い」です。高齢者に対するボランティアをし、「支え手」になっている高齢者のかたも周りにたくさんいます。また、白書のなかで紹介している、本日の討論者の堀田高連協代表が理事長をされている公益財団法人さわやか福祉財団のインストラクター育成・支援事業や埼玉県秩父市のみやかわ商店街の商店街振興組合の、「共助」の活性化を目指す地域通貨の取組みなどの活動事例は、人と人との「つながり」の機会づくりや、支え合いと活気のある社会をつくるための当事者一人ひとりの「協働の場」である「新しい公共」にもつながるものです。

<世代間の連携>
3点目は、高齢者と若者あるいは子どもたちとのつながりについてです。敢えて言うと、人は、仕事をしている最中は、「事業の論理」、「企業の論理」、あるいは「お金の論理」で動くし、鎧兜ならぬ背広に身を固めて行動し、効率、利潤、そして「組織の論理」に支配されます。ところが、人は定年退職すると、効率だけでない世界、もっとゆったりした社会において「新しい公共」や人とのつながりでのボランティアワーク、もう少しお金だけでないアンペィドワークなど、「やりがい」、「生きがい」そして「感謝される」とかに価値を置く活動に取組むようになっていきます。そのときに重要なのは、子どもあるいは若者と高齢者の接点をもっとつくることです。
私は、少子化担当大臣として学童クラブや保育園の問題を扱っていますが、学童クラブにおいて有償ボランティアで子どもたちに囲碁、将棋、書道などさまざまな趣味を教えるなど高齢者にはいろいろ出番があります。私は、保育所については「保育ママ」ならぬ「保育ババ」が大切であると思っています。実は私は「保育ママ」をしている人が小さなベビーホームを運営しているところに子どもを預けました。そのかたは当時いまの私より高齢で非常にゆったりした人でした。お蔭で子どもがゆったりと育ちました。子どもが人の掛け替えのない人生やそれから身につけたさまざまなものを自然に学ぶことは非常にいいことだと思います。私は高齢者と子どもたちをつなぐことを進めていきたいと思っています。

<課題先進国日本に必要な新産業>
樋口)続いて現在㈱三菱総合研究所理事長でもあります小宮山東京大学総長顧問に大学人と企業人の両方の立場からご発言をお願いします。

小宮山)いまの福島大臣のご発言に全部賛成したうえで、少し違った観点からお話しします。おそらく21世紀の人類の大きな課題は「有限の地球」、「爆発する知識」、そして「高齢社会」という3つの問題への対応だと思います。

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<高齢化は日本が抱える先進的課題>
世界の課題を日本は先進的に抱えており、自分たちの課題を解決していくことが世界の人類を引っ張ることになることから、日本は課題先進国であると私は常々主張しています。高齢化問題はまさに日本が抱える先進的課題です。真の豊かな高齢社会をつくるうえでは新産業という課題があります。これまで日本が引っ張ってきたのはエネルギー効率や環境技術等の「小さくなった地球」への対応領域におけるイノベーションです。今後日本は「モノづくり」によって支えながらシルバーの領域を引っ張っていかなくてはなりません。1つには、人がいろいろなハンディを負ったときに出て行けるようにすることです。出番と居場所があるので人は出続けることから精神や肉体を維持できますが、たとえば目が不自由だったり、膝や腰が痛かったりすると外に出難くなるため心身の劣化が進みます。その際、デジタルカメラと視神経を連結させてものが見えるようにする技術が開発されていますし、膝や腰が痛くても、歩こうとすると微弱な電流が流れてアクチュエーター(作動装置)を作動させて膝や腰をサポートするロボットスーツが開発されています。こうしたものをつくり込む技術はおそらく日本かアメリカのベンチャーにしかないと思います。
 産業としてもう1つ必要なのは介護の生産性を上げることです。介護士がロボットスーツを着て介護を行ってもいいのではないでしょうか。そのときには、素材、部材、さらにはセンサーやアクチュエーターなどいろいろなものを総動員してリハビリ用・介護用ロボットができることになります。

<グリーンとシルバーの分野でリードしよう>
いま21世紀のパラダイムは、1つはグリーンイノベーションで、ここは日本がきちんとリードしなければいけません。もう1つはライフイノベーション、つまりシルバーイノベーションです。これは間違いなく人類にとって必要な分野ですから、日本がきちんとこの分野をリードしていく必要があります。それを進めるために私は現在「プラチナ構想ネットワーク」を立ち上げています。これは、エコや高齢化への対応などをキーワードに地域が特徴を生かしたまちづくりを行い、大学が地域間の連携の起点となるものです。私が呼びかけたところ、三十数カ所の自治体がこのネットワークに参加したいと言ってきました。日本は、明治維新以来、国主導で産業を導入しGDPを増やし、国民を幸せにするモデルで進んできました。けれども、これは導入する産業が分っていたときに適用できるモデルでして、もうそのようなものは世界中どこにもありません。これからは逆転の発想で、市民が自分たちの暮らしをよくしようとしたときに初めて新しい産業が生まれ、GDPも増え、国も強くできます。その1つが間違いなくシルバー分野です。このような逆転の発想と、国の制度づくりのしなやかな協調関係構築の可能性が生き生きとした高齢社会づくりにとって大事なポイトだと思います。

樋口)次に、高連協代表の堀田力さん、お願いします。

<これからの高齢者の役割>
堀田)私は、高齢者の役割について3点述べたいと思います。まず高齢者が幸せに生きてみせ、それによって高齢社会の先端を拓いてこの社会でも皆最後まで幸せになれることを、子どもたちを含めて若い人たちに確り示すことです。
2番目は、生きている限りは社会のために役立つ義務があるという考え方に切り替えることです。誰かの役に立って有難うと言ってもらったほうが自分も元気になれます。また、最後まで人の役に立つことは生きている者として当然だという考え方が生かせるように就労、社会参加などのいろいろな仕組みをつくっていくことも必要です。高齢者がどのような状態になっても人に有難うと言って笑いながら自分を活かして生きていられる社会は高齢者だけではなく実は子どもたちも自分たちを思い切り活かして人に役立てるし、あるいは専業主婦のかたがた等もその能力を存分に社会に活かせます。だから、高齢者が最後までどんな状態になっても人の役に立てる仕組みが必要不可欠になるのだと思います。
3番目は、孫世代の人間的な成長を支援し、それに役立つことです。親世代はどうしても勉強、勉強と、あるいは社会、資格等々、社会からも追い詰められています。そこから抜け出してゆったりと人間として子どもたちの自分で育つ力、優しい心、人を支える力、しかしそのなかで自分のしたいことをして仲間とともに楽しむ力、そういったものをゆったりと認め、引き出していけることは、高齢者のまさに特権であり、その能力を存分に発揮することが大切であると思います。

樋口)それではいま出たそれぞれのお話に関し、ご意見をお願いします。

<「新しい公共」と「期待される高齢者」>
福島)小宮山さんのお話を聴いて、介護は気持ちの問題だが重力との戦いの部分があるし、またいまは1つ1つの技術はコストが嵩むが量が増えればコストダウンできるので、政権、あるいは内閣といった新しい政治の下で技術開発等の応援をしていきたいと思います。
また、堀田さんがおっしゃった人に感謝される活動、あるいは参加の仕組みに関しては、NPOに対する税制のあり方や、NPOはどこも財政難で悩んでいますが、いま国はNPOにお金を出せないので、もう少しNPOを応援する仕組みを国レベルでも考えたいと思います。また、NPOの評価も、お上ではなく市民たちが自由な立場で行うべきものだと思っています。「新しい公共」は、公が必要な部分もあるが、その公共を皆で支えるものですから、知識と経験とノウハウを持つ高齢者が「新しい公共」を支えていく面は非常にあると思います。

堀田)このあいだ、福島大臣も出ておられる「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」(社会的責任に関する円卓会議)において鳩山総理に対し提言しましたが、提言の中身には異論はありません。ただ、いろいろたくさんある課題に対してもう少し行政側で各大臣、関係者、関係各省庁・部門が集まって総合的な対応ができないものかと思いました。

福島)「新しい公共」にしろ、「持続可能な社会」にしろ、暫く休止していて漸く始まったばかりで未だ議論が煮詰まっていないこと、各省庁が連絡会議を行ったあと分担が漸く整ってき始めた段階にあることが理由として考えられます。ただ、私は漸くテーマに関して横断的で総合的な取組みが行なわれるくらいまでになってきのだとも痛感しています。

<当事者主義(主権)の重要性>
小宮山)会議に代表が出てきているから分るものでもなく、結局やってみないと分らないのではないでしょうか。地域によって全然状況が違うので寧ろ地域主導で始められるところが始めないと国がどうやってもできないと思います。

福島)当事者主義という言葉がありますが、現場は一番知恵があって、問題が分っていて、あらゆることが切実です。正直言って政治主導の悪いこともありますが、縦割りを打破するには政治主導のバーンと背中を押すみたいなところがないと突破できない面があります。だから、地域の現場の切実な声をエンジン部隊にして頑張っていく面と、縦割り打破のためにある種の政治主導でどこかでバーンと行う面の両方がなければ進まないと思います。

小宮山)私は、高齢者が教育にもっと関与していくべきだと思っています。その点たとえば京都の取組みは凄い。島津製作所や村田製作所や堀場製作所(HORIBA)など地域の企業が小・中学校に対し環境出前授業を実施しています。また、地域の人たちも地元の小学校に顔を出しています。このように、地域の学校に地域の人たちが入る必要があります。その1番のソースが高齢者だと私は思います。高齢者の能力や経験などを活かす相当部分は教育で、いま明らかに日本がそれを必要としています。

<高齢者の主体的な意見と行動>
堀田)小宮山さんからでた産業の話で、産業において高齢者を支える側面で人間の力をセーブするためにいろいろな機械の開発が進むことは素晴らしいのですが、高齢者の介護・支援となると、最後は人の肌の温かさ、伝わってくる気持ちの温かさ、安心みたいなものがないとこれはうまくいけません。だから、確りそういう人の温かさの力が発揮されるためにも機械が人間の力の部分を代替できるように産業が進歩すれば素晴らしいなと思いました。
 福島大臣に申しあげましたが、もう行政だけではやれない。国と地方だけでもやれない。基本的に市民が参加し、民間の力が確り加わって総合的な対応ができないと、高齢者問題にしろ、子どもの問題にしろいまや対応できなくなってきています。その総合の力をどう発揮するかについて「社会的責任に関する円卓会議」で討議していますが、ここが一番総合の基本であるのに行政がなかなか縦割りで言えないことが一番問題になっています。
一方、われわれ市民のほうでも各省庁の担当がどこだということではなくて、われわれとしてはこうしたいという姿を提言していくことがこれからは非常に大事になると思います。そういう提言をして初めて全体としての総合的な対応も生まれてくると思うのです。 

樋口)いま堀田代表も言われたとおり、いまのこういう激動の時期に高齢者の側からいろいろな政策検討をして私たちから円卓会議なり政府なりに政策提言をしていくことは益々大事になると思います。皆さまとご一緒に非常に密度の高いこの時間からこれからの活動を推進していきたいと思っています。本日はどうも有難うございました。

                          (文責 高連協参与 玉木康平)