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認知症・要介護高齢者の将来推計

<はじめに>
 日本人口は、2004年末をピークに減少に転じたが、人口高齢化は今後も進行し、高齢人口は少なくとも今後4半世紀にわたりその数は増加する。
 エイジング総合研究センターは、2006年2月、「日本人人口の将来推計」を発表し、2050年には日本人人口は9,000万人以下に減少し、高齢化率(65歳以上人口割合)も40%になることを示した。また今後は、高齢(老年)人口の高齢化も進行し、認知症や要介護の高齢者が増加するであろうと言及している。

 本研究は、この認知症や要介護高齢者の出現状況を把握するための将来推計研究で、介護保険者としての責務を有する地域自治体が、それぞれの地域で今後のケア対象者の把握に役立つ推計手法(将来推計モデル)の研究であり、2006年から始めた本研究は2009年春にその第1期研究を終える。
 ここに紹介するのは、この2年間に行った研究内容(概要)で、日本老年社会科学会大会でも一部紹介されているものである。
 本研究には、小川全夫・九州大学名誉教授(山口県立大学大学院教授)、甲斐一郎・東京大学大学院医学部教授、並びにエイジング総合研究センターの理事、研究員、そしてデータ資料を提供している自治体の部門担当者が参加している。
 なお今後の研究としては、ここに資料提供している自治体の出現状況の偏差の要因究明等を行い、将来推計に必要とされる社会データ等を研究し、地域自治体等が行い得る推計手法モデルとしてとりまとめたいと考えている。

エイジング総合研究センター 専務理事
吉田 成良

<推計方法>
1. データ
要介護・認知症高齢者の数については、医療費が全国平均と比較して高いA市、福祉サービスが長きにわたり充実していると言われるB区、高齢化率が高い一方で要介護・認知症高齢者の出現率が低いC市という3地域の協力を得て、2006年10月時点での要介護高齢者の数及び、性・年齢・要介護度・認知症程度・日常生活自立度別の認知症高齢者の数を収集した。

2. 推計方法
上記のデータを用いて、各地域における65歳以上の高齢者人口に占める要介護及び認知症高齢者の割合を算出(仮にこれを出現率と略記)して、各地域の出現率平均値を日本全域の出現率と仮定した。そして日本全体の将来動向の試算における推計人口は、エイジング総合研究センターが2006年2月に発表した日本人人口の将来推計を使用した。

<結果>
1. 3地域の概況
 表1に示すように、3地域では人口がA市で最も多く、高齢化率はC市が非常に高い。

2. 地域別の認知症出現率
 表2に示すのは、地域ごとの認知症出現率を性・年齢別に分析した結果である。男女ともA市の認知症出現率が3地域中最も高く、B区が最も低い。表には示していないが、認知症生活自立度別の出現率を見ると、超高齢期(85歳以上)に重度の認知症が急激に増加することが認められる。

3. 地域別の要介護高齢者の出現率
 表3に示すのは、地域ごとの要介護高齢者出現率を性・年齢別に分析した結果である。各地域を比較すると、A市の要介護認定者の出現率が男女共に高く、B区が低い。ただし高齢化が高いC市については、65-84歳の年齢別では出現率が最も低い。(なお、要介護認定は、3地域とも国が示す認定基準によって厳密に行われている。)

4. 認知症高齢者の将来推計(全国)
 表4に示すとおり、平均出現率による認知症高齢者の将来推計は、2005年には299.9万人だったものが2025年には552.8万人と、1.84倍に増加していた。この2025年の認知症高齢者数は、エイジング総合研究センターの日本人人口の将来推計における65歳以上の日本人人口の15.9%であり、後述の本推計研究における65歳以上要介護高齢者の78.7%にあたる。
 表には示していないが、性別でみると増加率は同程度であった。年齢階級別に見ると、2005年から2025年までの20年間における認知症の増加率は年齢とともに上昇し、85歳以上では2.26倍、男性で特に増加率が高く、2.44倍にもなっている。

5. 要介護高齢者の将来推計(全国)
 表5に示すとおり、平均出現率による要介護高齢者の将来推計は、2005年の392.2万人
から2025年の702.0万人と、1.79倍に増加している。しかし5年ごとの増加率は、2005年から2010年にかけて1.22倍であったのが、2020年から2025年にかけては1.09倍であり、年が経過するほど5年ごとの増加率が低下する傾向にある。
 表には示していないが、性別でみると増加率は男性で1.80倍、女性は1.79倍であった。年齢階級別に見ると、認知症と同様に要介護高齢者の増加率も年齢とともに上昇し、85歳以上では2.26倍、男性で特に増加率が高く2.44倍にもなっている。
 またエイジング総合研究センター推計の、65歳以上日本人人口に占める本研究の要介護高齢者の割合は、2005年の15.5%から2025年の20.2%まで、5ポイント近く上昇している(表6参照)。

<おわりに>
 今回は協力を得られた3自治体のデータに基づくパイロット的な試算であり、全国値を推計するには、なおケースを増やして推計する必要がある。本研究における推計は、厚生労働省による「2015年の高齢者介護」で用いられている将来推計と比較すると、全体でははるかに多い結果となった。しかし生活自立度などで全体を分類してみると、例えば「生活自立度III以上の認知症高齢者」など、「2015年の高齢者介護」よりも少ない推計値になるものもあった。
今後は認知症発現率を規定する要因を探り出して行く必要がある。例えば今後着目していきたい要因のひとつとして「高齢者の家族形態」や「高齢者の移動」が挙げられる。家族形態や高齢者の転入状況によって出現率がどのように異なるかを検証していく必要がある。また、規定要因の中でどれがコントロール可能なものであるのかを見定める必要もある。
 自治体は今後、地域密着型多機能サービスなどで、認知症高齢者や要介護高齢者の包括的なニーズに出来る限り対応する努力を傾けなければならない。それだけでなく、改めて家族による介護や地域の見守り・対応などとの最適統合を図る計画が考案されなければならない。そのためにも、基礎研究の結果を自治体の計画策定に適用できるようにする必要がある。